kaeguriの日記

2歳になる娘と猫1匹との暮らしです。プロフィール画像は奥さんがお風呂に描いた娘の似顔絵。

森と湖の国フィンランドデザイン

東京ミッドタウンのお客様先で打ち合せが終わった後、サントリー美術館で行われている「森と湖の国フィンランドデザイン」の広告が目に入り、18:00の閉館30分前に駆け込みました。

f:id:kaeguri:20130120132511j:plain

 

18世紀後半から現代にかけての、フィンランド、ガラス製品の展示が主となっており、カイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラ、ティモ・サルパネヴァ、オイヴァ・トイッカといったデザイナーが、ヌータヤルヴィ、イッタラで手がけた作品を見ることが出来ます。私は、力を持ったデザイナーと優れた職人、そして企業が協調して制作に取り組んでいた時代、1950-60年周辺のものを特に素晴らしいと感じました。

 

この年代のものは、まだ手の届く価格で手に入れることができて、かつ日常生活の中で使用することが出来るという点も嬉しいです(展覧会向けではなく一般向けに制作されたものですが)。現行のイッタラ製品もそうですし、カイ・フランクがヌータヤルヴィで手がけたプリズマシリーズは、厚みがあり安定感のある愛らしいフォルムで我が家の食卓でも活躍しています。

 

図録にある解説やインタビューもとても良い物です。「風土から生み出される造形は自然と深く結びついており、芯の強いフォルムをもちながら、繊細なラインが際立っている。」のです。強くて繊細、シャープで暖かい、といったように、一見背反する要素が調和して存在するのが面白い。自然そのもののように様々な顔を持っています。

 

図録のインタビューの中でオイヴァ・トイッカが話していたことは印象的でした。「僕は日本人ほど、身のまわりの生活用品に興味がある国民はそういないと思う。日本では一般市民が、日常使いの器でも道具でも、ひとつひとつ丹念に選び取って、生活に取り入れている。・・・さまざまな用の美をミックスして、その取り合わせを楽しんでいる。」として当時、日本の文化(民藝運動?)から大きな影響を受けたことを語っています。

 

オイヴァは、「さりげなさ」を日本人と共通する感覚としてあげています。また作品にあったとされる「ちょっとした遊び心」(これは民藝に欠けている要素かもしれません)というのは、無駄な物を削ぎ落したシンプルなデザインの中に感じられる暖かさにつながるものではないかと思いました。北欧の製品というのは使用していて暖かく楽しい気持ちにさせるものが多いのです。

 

この「遊び心」というのは、決してよけいな装飾を加えたり、不必要に形を歪めたり、といったものではありません。もっと真っ直ぐなもので、それはどこか「子供の目線」につながるものではないかと思います。娘を見ていると限られた経験の中、限られた言葉を駆使して感じたことを表現しようとするので、本質をついたような印象に残る発言をすることがあります。よけいなものを排除した美しいデザインの中には、そんな子供の目線を感じます。

 

張りつめた素敵な空気を持った会場です。展示を通してガラス製品というのは、光の生み出す作品であるということが実によくわかりました。展示の仕方、おそらく照明が大きく影響していると思うのですが、ガラス製品の持つ美しさが際立っています。あまりに素晴らしかったので次の日は、私が娘を保育園に迎えにいくことになり、妻が仕事の後に感動することになったのでした。

 

東京ミッドタウンのサントリー美術館での展示は1月20日まで、今後は大阪市立東洋陶磁美術館(2013年4月20日-7月28日)、北海道立近代美術館(2013年10月1日-11月24日)と巡回します。

f:id:kaeguri:20130117172943j:plain